業績が良かったのに、決算発表後になぜ株価が下がってしまうのか?
その理由(可能性)について、10年近く個人投資家担当(IR担当)を経験した【もころぐ】が解説します。
決算がよかったのに株価が下がってしまう理由は、主に4つあります。
✅決算がよかったのは一時的な要因によるため
✅メインの事業がジリ貧の分野だから
✅大口の投資家が売ったから
✅株式全体が下落しているから
そもそもの前提になりますが、
株価は株式市場がどう判断するかによって決まります。
そのため、
こうだから絶対にあがる!
こうだから絶対に下がる!
と断言することはできません。
そのため、理由を考える際はあくまでも可能性であることをご了承ください。
それでは、株価が下がる理由について順に解説していきます。
なぜ株価がさがる?:決算がよかったのは一時的要因による場合
一時的要因というのは、今回の決算だけ発生した要因になります。
よくあるのが、
1⃣保有している資産の売却や譲渡
2⃣人員削減などによるコストカット
3⃣税金などの取り崩しによるもの
などです。
ここでは、一時要因の解説としてSONYの決算情報を例にだします。
2018年度のSONYの決算は以下の通りです。
オレンジの枠内の税引き前利益に注目して解説していきます。
SONYでは、一時要因などが発生した場合個別に説明も掲載されています。
今回の一時要因としてあげられているのは、【Spotify】の株式の評価益と売却益です。
株の評価益や売却益として1,500憶近くの利益がでていますが、この利益はあくまで一時的なものです。
そのため、来期以降もこの利益が発生するわけではありません。
引き続き株を売った場合は特別利益として発生しますが、SONYの本業は株の売買ではないためあくまで一時要因としてみなされます。
本業が不調で一時要因によって最終利益をよく見せようとする企業の場合、当たり前ですが評価されることはありません。
そのため、最終業績が良いにも関わらず株価が下がってしまう場合、一時要因(特別利益)による可能性を疑ったほうがよいです。
なぜ株価が下がる?:メインの事業がジリ貧の分野の場合
今回の決算がいくら良くてもジリ貧の分野で稼いでいる場合、徐々に利益が減少する可能性が非常に高いです。
日本の株に投資をしているのは、個人投資家だけではありません。
機関投資家と呼ばれる、投資をメイン事業とする会社や、GPIFといった年金機構、銀行などの金融機関も数多く参戦しています。
実際、東京証券取引所の株式の8割は機関投資家が保有、そのうちの3割が外国人機関投資家によって保有されています。
例えば、配当で人気の三菱商事の株主構成は以下の通りです。
引用:三菱商事HPより
外国法人を含めた機関投資家の投資の特徴として、非常に企業の将来性を重視します。
つまり、決算が出た瞬間彼らの興味は現在ではなく会社の将来にうつります。
そのため会社の将来性がジリ貧だと判断すれば、たとえ現在の決算がよくても容赦なく株式を売却します。
その結果、決算発表がよかったにも関わらず株価が下がることが多いです。
なぜ株価が下がる?:大口の投資家が売却した場合
日本の株式市場の場合、機関投資家や年金機構、金融機関によって大部分が保有されています。
機関投資家や年金機構などは資産を運用し利益をあげるために、定期的に投資ポートフォリオの見直しを行っています。
また、多くの機関投資家は全世界で分散投資をしているため国や事業ごとにポートフォリオに組み込める割合が決まっています。
例えば保有している日本企業の食品会社の株価がぐんぐん上昇すれば、ポートフォリオ内で食品セクターが占める割合が高まっていきます。
そうなると、機関投資家はリバランスのために食品会社の株を売却し、ポートフォリオ内に占める割合を調整します。
個人にも人気が高い三菱商事の出来高と比べてみましょう。
赤い枠内は、直近3か月以内で最も出来高(一日の株式の取引量)が多かった日です。
オレンジ枠内は、最近の出来高の推移です。
普段は1日500万株いかないぐらいの出来高ですが、もしここに毎日何万、何十万もの売りが続けば確実に株価は下がるでしょう。
ただ、このリバランスはあくまでポートフォリオ内の保有比率を整えるためであり、企業業績の問題や不祥事による売りではありません。
そのためリバランスによって一時的に株価は下落することはありますが、時間がたてばもとに戻ることが多いです。
なぜ株価が下がる?:株式相場全体が下落しているから
例えば2007年のリーマンショック、最近だとコロナショックなど相場全体が下がっているときです。
こういうときは、企業の業績関係なくほとんど売られます。
ただ下落相場の中でも、
✅業績をしっかりと伸ばしていく
✅株主還元に力をいれる
✅国策銘柄
などは株価の回復も早い傾向にあります。